非居住者親族
英語表記は 用語集 に準拠。
居住者・非居住者の定義と判定
出典: No.2875 居住者と非居住者の区分(国税庁タックスアンサー、令和7年4月1日現在法令等)
基本定義(所得税法第2条)
- 居住者: 国内に 住所 を有し、又は現在まで引き続いて 1年以上 居所を有する個人
- 非居住者: 居住者以外の個人
居住者の判定(2つのルート):
ルート1: 国内に「住所」(生活の本拠)を有する → 居住者
ルート2: 国内に引き続き1年以上「居所」を有する → 居住者
いずれにも該当しない → 非居住者- 住所: 個人の 生活の本拠。客観的事実により判定(その人の生活の中心がどこか)
- 居所: 生活の本拠ではないが、その人が現実に居住している場所
住所の推定(所得税法施行令第14条・第15条)
客観的事実だけでは住所を判定しにくい場合に、以下の推定規定が適用される。
国内に住所を有すると推定される場合:
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| (1) 職業要件 | 国内において継続して 1年以上 居住することを通常必要とする職業を有する |
| (2) 国籍+総合要件 | 日本国籍 を有し、かつ、国内に生計を一にする配偶者等の親族を有する等、国内で1年以上居住すると推測するに足りる事実がある |
国内に住所を有しないと推定される場合:
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| (1) 職業要件 | 国外において継続して 1年以上 居住することを通常必要とする職業を有する |
| (2) 国籍+総合要件 | 外国国籍 又は永住許可を有し、かつ、国内に生計を一にする配偶者等の親族を 有しない 等、再び国内に帰り主として居住すると推測するに足りる事実がない |
推定の家族への波及
推定規定には 家族単位での連動 がある:
- 国内に住所を有すると推定される個人と 生計を一にする 配偶者・扶養親族が 国内に居住 → その家族も 居住者と推定
- 国内に住所を有しないと推定される個人と 生計を一にする 配偶者・扶養親族が 国外に居住 → その家族も 非居住者と推定
例: 海外赴任(1年以上の予定)
本人 → 非居住者と推定
帯同した配偶者・子(国外に居住)→ 非居住者と推定(波及)
日本に残った配偶者・子(国内に居住)→ 波及しない(個別に判定)事情変更時の再判定(将来効のみ、遡及なし)
出典: 業務の都合により1年未満で帰国したり、海外勤務が1年以上となった場合の居住者・非居住者の判定(国税庁 法令解釈)
判定は 出国時の予定 に基づいて行い、事情変更があっても 遡及しない:
| ケース | 出国時の判定 | 事情変更後 |
|---|---|---|
| 1年以上の予定で出国 → 1年未満で帰国 | 出国時から 非居住者 | 帰国が明らかになった日以後 → 居住者 に変更(出国時に遡及しない) |
| 1年未満の予定で出国 → 1年以上に延長 | 出国時は 居住者 のまま | 延長が明らかになった日以後 → 非居住者 に変更(出国時に遡及しない) |
原則: 判定時点は「予定」ベース、変更は「将来に向かって」のみ
1年の判定: 「超える」であり「以上」ではない
技能実習生の事例(国税庁タックスアンサー No.2875): 入国日翌日から起算して1年を経過する日を 超えて 国内に居住する場合に初めて「1年以上」の要件を満たす。ちょうど1年で出国する場合は要件を満たさず、非居住者と判定される。
租税条約による判定
二重課税防止のため、租税条約でいずれの国の居住者かを判定する場合がある: 個人の場合、①恒久的住居の場所、②利害関係の中心がある場所、③常用の住居の場所、④国籍 の順で判定。
用語の整理: 非居住者・国外居住親族・控除対象外国外扶養親族
年末調整関連の文書・様式で「非居住者」を指す用語が複数存在するが、指している概念は同一:
非居住者である親族 = 国外居住親族国外居住親族に関するFAQ(国税庁)も冒頭で「非居住者(国内に住所を有せず、かつ、現在まで引き続いて1年以上国内に居所を有しない人)である親族」と定義している。
扶養控除等申告書における用語の使い分け
| 申告書のセクション | 使われている用語 | 根拠法 |
|---|---|---|
| 源泉控除対象配偶者 | 非居住者である親族 | 所得税法 |
| 控除対象扶養親族 / 源泉控除対象親族 | 非居住者である親族 | 所得税法 |
| 16歳未満の扶養親族(住民税に関する事項) | 控除対象外国外扶養親族 | 地方税法 |
用語が異なる理由は、根拠法の違いと推測される: ⚠️ 地方税法の該当条文は未確認。以下は所得税法の定義と申告書の構造から導いた推測。
- 「非居住者」 は所得税法第2条第1項第5号で定義された法律用語。国際課税における居住者/非居住者の区分(全世界所得課税 vs 国内源泉所得課税)という所得税法固有の概念体系に属する
- 地方税法は別の法律であり、所得税法の「非居住者」をそのまま借用していないと考えられる。住民税は住所地課税が原則で、所得税法の居住者/非居住者という概念体系を持たないため、「国内に住所を有しない」「国外に居住する」といった独自の表現で同じ事実状態を記述していると推測される
- 扶養控除等申告書の中で用語が切り替わるのは、法律の管轄が切り替わる境界に対応していると考えられる
扶養控除等申告書
├── 所得税の部分(源泉控除対象配偶者、控除対象扶養親族 等)
│ → 所得税法の用語体系: 「非居住者である親族」
│
└── 住民税に関する事項(16歳未満の扶養親族)
→ 地方税法の用語体系: 「控除対象外国外扶養親族」「控除対象外」が付く理由:
- 16歳未満はもともと所得税の扶養控除対象外だが、住民税の非課税限度額算定ではカウントされる
- しかし国外に住む16歳未満は住民税の算定でもカウント しない → 「控除対象外」はこの住民税上の除外を意味する
年末調整における非居住者の適用範囲
本人(納税者)が非居住者 → 年末調整の対象外。甲欄適用の居住者であることが年末調整の前提。
年末調整で「非居住者」が問題になるのは 配偶者と親族 のみ:
- 非居住者の 同一生計配偶者 → 配偶者控除・配偶者特別控除の対象にはなるが、年齢による追加制限はない
- 非居住者の 扶養親族 → 年齢区分別の追加要件が適用される(下記参照)
- いずれも確認書類の提出が必要
非居住者の控除対象扶養親族
書類添付義務の導入と厳格化の経緯
国外居住親族に係る扶養控除の要件は段階的に厳格化されてきた:
- H28 (2016) 改正: 親族関係書類・送金関係書類の 添付義務 を導入。それ以前は書類の添付なしで国外居住親族の扶養控除が適用可能だった
- 令和5年施行: 30歳以上70歳未満の非居住者に追加要件(留学・障害者・38万円送金のいずれか)を課し、さらに厳格化
年齢区分別の追加要件
居住者の場合は16歳以上で控除対象となるが、非居住者の場合は追加要件がある:
| 区分 | 年齢 | 追加要件 |
|---|---|---|
| ① | 16歳以上30歳未満 | なし(年齢のみで控除対象) |
| ② | 70歳以上 | なし(年齢のみで控除対象) |
| ③-a | 30歳以上70歳未満 | 留学により国内に住所等がない者 |
| ③-b | 30歳以上70歳未満 | 障害者 |
| ③-c | 30歳以上70歳未満 | 所得者から年38万円以上の生活費・教育費の支払を受けている者 |
| (対象外) | 30歳以上70歳未満で③のいずれにも非該当 | 控除対象外 |
配偶者控除・配偶者特別控除については、非居住者配偶者にもこの年齢制限は 適用されない。 → 配偶者特別控除 非居住者配偶者への適用 参照
確認書類
非居住者親族に係る確認書類(親族関係書類・留学ビザ等書類・送金関係書類・38万円送金書類)の詳細は → 非居住者親族に関する書類 参照
38万円判定の詳細ルール
送金日の判定
| 送金方法 | 支払日 |
|---|---|
| 金融機関から送金 | 居住者が金融機関で 送金を行った日(入金日ではない) |
| クレジットカード | 国外居住親族が カードを利用した日(引落日ではない) |
手数料の取扱い
送金手数料等の各種手数料は、38万円送金書類にその額が記載されている場合に限り、送金額に含めて判定可能。
- 例: 37万円送金 + 手数料1万円 = 38万円として判定可
個人別送金の原則
- 送金は国外居住親族 各人別 に行う必要がある
- 代表者にまとめて送金した場合、その代表者のみの送金関係書類に該当し、他の親族分にはならない
- 共同名義口座への送金も、個々の親族への送金が明らかでなければ送金関係書類に該当しない
- 複数年分をまとめて送金した場合、送金した年分のみの書類に該当(他年分には使えない)
- 現金手渡しは不可(知人経由の手渡しの申立書も送金関係書類に該当しない)
外貨換算の詳細ルール
出典: 国税庁 国外居住親族に係る扶養控除等Q&A Q7(p.9-11)
邦貨換算の3方式
| 方法 | 銀行送金(本邦通貨→外国通貨) | クレジットカード利用 |
|---|---|---|
| 原則 | 送金日のTTM(電信売買相場の仲値) | カード利用日のTTM |
| 例外① | 円預金→外貨購入→即時送金の場合、実際に支出した円額 | 円預金口座から引落の場合、実際の引落額 |
| 例外② | 年間合計額を、年最後の送金日のTTMで一括換算 | 年間合計額を、年最後のカード利用日のTTM又は実際に適用された外国為替の売買相場で一括換算 |
注: 例外②の「一括換算」は38万円判定においても認められる。
TTMの選択ルール
- 原則: 送金に係る金融機関のTTMを使用
- 例外: 居住者の主たる取引金融機関のTTM等、合理的なものを継続して使用している場合はそれでも可
- その送金に係る金融機関のTTMが存在しない場合: 主たる取引金融機関のTTM
年最後の支払の定義
年末調整の場合:
- 扶養控除の適用を受けるために「生計を一にする事実」を記載した扶養控除等申告書を提出する直前の支払
年始調整では、実際の年最後の送金日を使用する(1月に前年の確定事実を入力するため、最終送金日が確定済み)。
送金方法の混在
同一の親族に対して、国外送金とクレジットカード利用の両方で支払う場合は、方法別に邦貨換算を行い、その結果を合算する。
例: 銀行送金3回(USD)+ クレジットカード利用2回(EUR)の場合:
- 銀行送金分は銀行送金の換算ルール(原則/例外①/例外②のいずれか)で邦貨換算
- クレジットカード分はクレジットカードの換算ルール(原則/例外①/例外②のいずれか)で邦貨換算
- 1 + 2 の合算額で38万円判定
複数通貨の一括換算
一括換算(例外②)を選択する場合の、複数通貨が混在するケース:
- 基準日は送金方法ごとに1つ: 銀行送金の年最後の送金日と、クレジットカードの年最後の利用日は異なりうる
- 通貨ごとにその基準日のTTMを適用: 同一送金方法でもUSD送金とEUR送金がある場合、基準日は同じだが適用するTTMレートは通貨ごとに異なる
例: 銀行送金でUSDとPHPの2通貨を送金しているケース(一括換算)
銀行送金の年最後の送金日: 2025/11/15
├── USD送金 合計 $2,000 × 2025/11/15のTTM(USD) 150.00円 = 300,000円
└── PHP送金 合計 ₱50,000 × 2025/11/15のTTM(PHP) 2.60円 = 130,000円
合計: 430,000円 ≧ 38万円 → 要件充足クレジットカード利用の特則
- 親族がクレジットカードを利用した日が「支払日」となる(居住者の銀行口座からの引落日ではない)
- 例: 引落が翌年(令和8年)でも、カード利用が令和7年中であれば令和7年分の送金額に算入
- 外国通貨で決済された場合: カード利用日のTTMで換算(原則)
- 円預金口座から引き落とされる場合: 実際の引落額で判定可(例外①)
電子決済手段
送金関係書類には電子決済手段等取引業者の書類も含まれる:
- 電子決済手段: いわゆるステーブルコイン(法定通貨の価値と連動し、発行価格と同額で償還を約するもの)
- 電子決済手段等取引業者が行う電子決済手段の移転により居住者から国外居住親族に支払をしたことを明らかにする書類
- 金融機関には、資金決済に関する法律第2条第3項に規定する資金移動業者も含まれる
留学の定義
- 国内に住所又は居所を有していた親族が、外国の大学・高校等に留学することにより非居住者となった者
- 1年以上の留学 が前提(1年未満の短期留学は国外居住親族に該当しない)
- 留学の在留資格に相当する資格をもって外国に在留することが要件
非居住者の障害者認定の制限
非居住者が障害者に該当するかは日本の法令に基づく障害者の定義で判定する:
- 精神上の障害により事理弁識能力を欠く常況にある者
- 知的障害者と判定された者
- 精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている者
- 身体障害者手帳に記載されている者
- 等
重要: 外国政府等から発行された障害者手帳は、日本の法令に基づく手帳ではないため、それだけでは障害者に該当しない。実質的に日本の法令上の障害者に該当するかどうかで判定する必要がある。
年末調整における注意事項
- 年末調整時に送金関係書類の提出がない場合、その国外居住親族については控除を 適用できない
- 源泉徴収票作成前に書類が提出されれば年末調整の再計算可能
- 源泉徴収票作成後の場合は確定申告で対応
- 扶養控除等申告書の「生計を一にする事実」欄に、当年の送金総額を記載する必要がある(年末調整時に追記)