年末調整対象外の控除
年末調整では処理できない3つの所得控除(雑損控除・医療費控除・寄附金控除)の概要を整理する。これらは確定申告でのみ適用可能。
年末調整との境界については → 確定申告との境界 を参照。
雑損控除
災害・盗難・横領により生活に通常必要な資産に損害を受けた場合に適用できる控除(所得税法第72条)。
適用要件
- 対象資産: 納税者本人または生計を一にする総所得金額等が48万円以下の親族が所有する、生活に通常必要な資産
- 損害の原因: 災害(震災・風水害・火災等)、盗難、横領に限定(詐欺・恐喝は対象外)
- 申告方法: 確定申告が必要
控除額の計算
次の(1)と(2)のいずれか多い方の金額:
(1) (損害金額 + 災害関連支出 − 保険等補填額) − 総所得金額等 × 10%
(2) 災害関連支出 − 5万円- 損害金額: 損害を受けた時の資産の時価を基に計算した損害額(損失額の合理的計算方法による)
- 災害関連支出: 災害に関連してやむを得ず支出した金額(取壊し費用、原状回復費用等)
- 控除しきれない場合は翌年以後3年間繰り越せる
災害減免法との選択適用
災害による損害については、雑損控除と災害減免法による軽減・免除のいずれか有利な方を選択できる(→ 災害被害者に対する税の減免・猶予)。
医療費控除
納税者本人または生計を一にする配偶者・親族のために支払った医療費が一定額を超える場合に適用できる控除(所得税法第73条)。
適用要件
- 対象者: 納税者本人が、自己または生計を一にする配偶者・親族のために支払った医療費
- 対象期間: その年の1月1日〜12月31日に実際に支払った医療費(未払い分は対象外)
- 申告方法: 確定申告が必要(医療費控除の明細書を添付)
控除額の計算
医療費控除額 = 支払った医療費 − 保険等補填額 − 足切額- 足切額: 10万円 または 総所得金額等 × 5% のいずれか少ない方
- 上限: 200万円
セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)
健康の保持増進および疾病の予防として一定の取組を行っている納税者が、スイッチOTC医薬品を購入した場合の特例。通常の医療費控除との選択適用(併用不可)。
控除額 = 対象医薬品の購入額 − 12,000円(上限: 88,000円)- 一定の取組: 特定健康診査、予防接種、定期健康診断、がん検診、健康診査等
- 通常の医療費控除と同様に確定申告が必要
寄附金控除
国や地方公共団体、特定の法人等に対する寄附金について適用できる控除(所得税法第78条)。
適用要件
- 対象寄附金: 国・地方公共団体への寄附金、指定寄附金、特定公益増進法人への寄附金、認定NPO法人への寄附金等
- 申告方法: 原則として確定申告が必要(ふるさと納税ワンストップ特例を除く)
控除額の計算
寄附金控除額 = 特定寄附金の合計額 − 2,000円- 特定寄附金の合計額は、総所得金額等の**40%**が上限
- 政党等寄附金・認定NPO法人寄附金・公益社団法人等寄附金は、所得控除に代えて税額控除を選択できる
ふるさと納税ワンストップ特例
確定申告を行わない給与所得者等が、ふるさと納税先が5団体以内の場合に利用できる制度。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 効果 | 確定申告なしで寄附金控除(住民税の税額控除)が受けられる |
| 適用範囲 | 住民税のみの制度(所得税の寄附金控除は適用されない。住民税の控除で所得税相当額も含めて控除) |
| 手続き | 寄附先の自治体に「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」を提出 |
| 利用不可の場合 | 確定申告を行う場合(医療費控除の申告等)、6団体以上に寄附した場合 |
注意: ワンストップ特例を申請済みでも、確定申告を行うとワンストップ特例は無効になる。確定申告を行う場合は、ふるさと納税分も含めて寄附金控除を申告する必要がある。
従業員への案内ガイダンス
年末調整システムにおいて、これら3控除について従業員に案内する際のポイント。
案内すべき情報
- これらの控除は年末調整では処理できず、確定申告が必要であること
- 確定申告の時期(翌年2月16日〜3月15日。還付申告は1月1日から可能)
- e-Tax(国税電子申告・納税システム)で申告可能であること
ガイダンス文言例
以下の控除は年末調整の対象外です。適用を受けるには、ご自身で確定申告を行ってください。
- 雑損控除: 災害・盗難・横領による損害がある場合
- 医療費控除: 年間の医療費が一定額を超えた場合(セルフメディケーション税制を含む)
- 寄附金控除: 国・地方公共団体・特定の法人等への寄附がある場合(ふるさと納税を含む)
ふるさと納税をされた方で、寄附先が5団体以内の場合は「ワンストップ特例制度」を利用すれば確定申告は不要です。ただし、医療費控除等で確定申告を行う場合はワンストップ特例が無効になるため、ふるさと納税分も確定申告に含める必要があります。