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配偶者のカテゴリ

配偶者に関する税法上のカテゴリ体系と、扶養親族・同一生計配偶者に共通する合計所得金額の閾値の変遷。

→ 基礎概念(親族・血族・姻族等の定義)は 親族の基礎概念 参照 → 控除の詳細は 配偶者控除 / 配偶者特別控除 参照


合計所得金額の要件の共通閾値と変遷

扶養親族と同一生計配偶者の所得上限は 共通の閾値 を使用しており、基礎控除額と連動して改定される。 この閾値は年度によって変わるパラメータである。

現在の閾値

58万円(合計所得金額。給与収入換算: 123万円)

共通性

この閾値は以下の判定で 共通 に使用される:

  • 同一生計配偶者の合計所得金額の要件(配偶者の合計所得金額 ≤ 閾値)
  • 扶養親族の合計所得金額の要件(親族の合計所得金額 ≤ 閾値)

一方が改定されればもう一方も同額に改定される。

特定親族の下限との関係

特定親族(Specified relatives)の所得下限は「扶養親族の閾値を超えた」ところから始まる設計意図がある。 閾値が変わると特定親族の所得範囲も連動して変わることが想定される。

注意事項

  • 同一生計配偶者と扶養親族で 必ず同じ閾値 が使われる(制度上、片方が改定されればもう片方も同額に改定される)
  • 特定親族の所得下限もこの閾値から導出される
  • 以下のドキュメントで記載する具体的な金額は、特に年度の断りがない限り令和7年(R7)基準であり、年度によって異なる
  • 注意: 国税庁の R7 英語フォーム(年初公開版)は改正前の 48万円で記載されているが、令和7年度税制改正(12月1日施行)により 58万円 に引き上げられた。英語フォームの "480,000 yen" は改正前の値である

配偶者の税法上のカテゴリ

配偶者には複数の税法上のカテゴリがあり、本人の合計所得金額配偶者の合計所得金額 の2軸で判定される。 これらは単純な包含関係(ツリー構造)ではなく、条件が異なる独立した概念が重なり合う構造 である。

各カテゴリの定義

DouitsuSeikeiHaigusha(同一生計配偶者 / Spouse living in the same household)

条件: 以下の全てを満たす配偶者。

  1. 生計を一にする
  2. 配偶者の合計所得金額 ≤ 共通閾値(58万円。変遷は上記「合計所得金額の要件の共通閾値と変遷」参照)
  3. 青色事業専従者・白色事業専従者でない

国税庁の定義: 「A spouse ... who lives in the same household with the worker and whose estimated income is 480,000 yen or less」 ※ 国税庁英語フォームの "480,000 yen" は改正前の値。現行は 58万円以下特徴: 本人の合計所得金額の要件はない。配偶者の合計所得金額のみで判定。 用途: 障害者控除の対象判定の基礎。以下の2カテゴリの前提条件。

KojoTaishoHaigusha(控除対象配偶者 / Spouse qualified for deduction)

条件: 同一生計配偶者であり、かつ 本人の合計所得金額 ≤ 1,000万円関係: 同一生計配偶者 ⊃ 控除対象配偶者(本人の合計所得金額の制限を追加した部分集合)。 用途: 配偶者控除(Exemption for Spouse)の適用対象。

GensenKojoTaishoHaigusha(源泉控除対象配偶者 / Spouse qualified for withholding deduction)

条件: 以下の全てを満たす配偶者。

  1. 生計を一にする
  2. 配偶者の合計所得金額 ≤ 95万円(給与収入 ≤ 160万円)
  3. 本人の合計所得金額 ≤ 900万円
  4. 青色事業専従者・白色事業専従者でない

用途: 月次の源泉徴収(甲欄の扶養人数カウント)に影響。年末調整ではなく 月次給与計算 に関わる概念。

  • 源泉控除対象配偶者に該当 → 扶養人数 +1
  • さらに障害者控除の対象でもある場合 → 扶養人数 +2(配偶者分+1、障害者分+1) 注意: 夫婦相互に適用不可(夫婦が互いに源泉控除対象配偶者として申告することはできない)。

配偶者特別控除(Special Exemption for Spouse)の対象

条件: 以下の全てを満たす場合。

  1. 生計を一にする配偶者で、青色/白色事業専従者でない
  2. 配偶者の合計所得金額が共通閾値超〜133万円以下(58万円超〜133万円以下)
  3. 本人の合計所得金額 ≤ 1,000万円

配偶者控除の合計所得金額の要件(同一生計配偶者の閾値 T)を超えた配偶者に対する段階的控除。

同一生計配偶者と源泉控除対象配偶者は包含関係にない

重要: この2つは配偶者の合計所得金額の閾値が異なるため、どちらかがもう一方の部分集合ではない

比較軸同一生計配偶者源泉控除対象配偶者
配偶者の合計所得金額の要件≤ T(58万円)≤ 95万円
本人の合計所得金額の要件なし≤ 900万円
用途配偶者控除・障害者控除の基礎月次源泉徴収の扶養人数

以下のケースが存在する:

  • 配偶者の合計所得金額40万円・本人の合計所得金額800万円 → 両方に該当
  • 配偶者の合計所得金額40万円・本人の合計所得金額950万円 → 同一生計配偶者のみ(源泉控除対象配偶者でない: 本人の合計所得金額>900万円)
  • 配偶者の合計所得金額70万円・本人の合計所得金額800万円 → 源泉控除対象配偶者のみ(同一生計配偶者でない: 配偶者の合計所得金額>T)
  • 配偶者の合計所得金額100万円・本人の合計所得金額800万円 → どちらにも該当しない(ただし配偶者特別控除の対象)

配偶者の合計所得金額と適用カテゴリの全体像

本人の合計所得金額 × 配偶者の合計所得金額 で判定される全カテゴリ(閾値 T = 共通閾値 58万円):

本人の合計所得金額 ≤ 900万円本人の合計所得金額 900万円超〜1,000万円本人の合計所得金額 > 1,000万円
配偶者の合計所得金額 ≤ T同一生計✓ 控除対象✓ 源泉控除対象✓同一生計✓ 控除対象✓同一生計✓
配偶者の合計所得金額 T超〜95万円源泉控除対象✓ 配偶者特別控除✓配偶者特別控除✓--
配偶者の合計所得金額 95万円超〜133万円配偶者特別控除✓配偶者特別控除✓--
配偶者の合計所得金額 > 133万円------

→ 同一生計配偶者と源泉控除対象配偶者が交差する構造が明確に見える。 → T(共通閾値)が変わるとマトリクスの行の境界が移動する。

退職手当等を有する配偶者の注意: 配偶者が退職手当等を受けた場合、所得税と住民税で合計所得金額が異なるため(所得税は退職所得を含む、住民税は源泉徴収済みなら含めない)、上記マトリクスの判定結果が税目ごとに異なりうる。→ 令和4年施行(退職手当等を有する配偶者・扶養親族の申告欄追加)/ 所得税と住民税 参照

国税庁公式カテゴリの命名問題と便宜的カテゴリ

国税庁の公式カテゴリ(同一生計配偶者・控除対象配偶者・源泉控除対象配偶者)は、 すべての配偶者の状態をカバーしておらず、名前のないケースが存在する。 また、「控除対象配偶者」という名称は 配偶者控除の対象 という意味だが、 「控除の対象」と読めてしまい、配偶者特別控除や障害者控除は別途適用されうることが伝わらない。

名前のないケース

上記マトリクスで、源泉控除対象配偶者に 該当しない が配偶者特別控除を 受けられる 配偶者:

配偶者の合計所得金額本人の合計所得金額源泉控除対象配偶者配偶者特別控除国税庁カテゴリ名
95万円超〜133万円≤ 900万円非該当(配偶者の合計所得金額>95万円)適用可なし
T超〜95万円900万円超〜1,000万円非該当(本人の合計所得金額>900万円)適用可なし
95万円超〜133万円900万円超〜1,000万円非該当(両方超過)適用可なし

同様に、いずれの控除も受けられない配偶者にも国税庁公式の名称がない:

  • 配偶者の合計所得金額 > 133万円 → 配偶者控除✗、配偶者特別控除✗、障害者控除✗(同一生計配偶者にも非該当)
  • 配偶者の合計所得金額 ≤ T かつ 本人の合計所得金額 > 1,000万円 かつ 障害者でない → 同一生計配偶者✓だが実質的にどの控除も適用されない

「控除対象配偶者」の名称の曖昧さ

「控除対象配偶者」は 配偶者控除(Exemption for Spouse)の対象 という意味であり、 控除対象配偶者に 非該当 でも以下の控除は受けられうる:

  • 配偶者特別控除: 配偶者の合計所得金額 T超〜133万円(控除対象配偶者の合計所得金額の要件を超えている)
  • 障害者控除: 同一生計配偶者で障害者(本人の合計所得金額 > 1,000万円でも可)

したがって「控除対象配偶者ではない = 何の控除も受けられない」は誤り。 本来は「配偶者控除対象配偶者」のような名称がより正確だが、国税庁の公式用語であるため変更はできない。

便宜的カテゴリの定義

国税庁の公式カテゴリだけでは配偶者の全状態を一意に表現できないため、 以下の 便宜的カテゴリ を定義する。これらは国税庁公式用語ではない。

便宜的カテゴリ定義国税庁公式カテゴリとの関係
配偶者特別控除対象配偶者配偶者特別控除の対象となる配偶者。配偶者の合計所得金額 T超〜133万円 + 本人の合計所得金額 ≤ 1,000万円国税庁に対応する名称なし。控除対象配偶者(=配偶者控除の対象)と対になる概念
非源泉控除対象特別控除対象配偶者源泉控除対象配偶者に該当しないが、配偶者特別控除の対象となる配偶者。配偶者特別控除対象配偶者の部分集合国税庁に対応する名称なし
控除対象外配偶者配偶者控除・配偶者特別控除・障害者控除のいずれの控除も受けられない配偶者国税庁に対応する名称なし

カテゴリ間の関係:

配偶者特別控除対象配偶者(配偶者の所得 58万円超〜133万円+本人の所得 ≤ 1,000万円)源泉控除対象配偶者に該当する配偶者特別控除対象配偶者(配偶者の所得 58万円超〜95万円+本人の所得 ≤ 900万円)非源泉控除対象特別控除対象配偶者(源泉控除対象配偶者に非該当)
配偶者特別控除対象配偶者(配偶者の所得 58万円超〜133万円+本人の所得 ≤ 1,000万円)源泉控除対象配偶者に該当する配偶者特別控除対象配偶者(配偶者の所得 58万円超〜95万円+本人の所得 ≤ 900万円)非源泉控除対象特別控除対象配偶者(源泉控除対象配偶者に非該当)

注意: 国税庁公式の「控除対象配偶者」は「配偶者控除 の対象配偶者」という意味で使われているが、 名称から「何らかの控除の対象」と誤読されうる。文脈が曖昧な場合は「配偶者控除の対象(控除対象配偶者)」のように補足すると明確になる。

全カテゴリマトリクス(便宜的カテゴリ込み)

本人の合計所得金額 ≤ 900万円本人の合計所得金額 900万円超〜1,000万円本人の合計所得金額 > 1,000万円
配偶者の合計所得金額 ≤ T同一生計✓ 控除対象✓ 源泉控除対象✓同一生計✓ 控除対象✓同一生計✓ (※1)
配偶者の合計所得金額 T超〜95万円源泉控除対象✓ 特別控除対象✓特別控除対象✓ (※2)控除対象外
配偶者の合計所得金額 95万円超〜133万円特別控除対象✓ (※2)特別控除対象✓ (※2)控除対象外
配偶者の合計所得金額 > 133万円控除対象外控除対象外控除対象外

※1: 同一生計配偶者✓ だが、障害者でなければ実質的にどの控除も適用されない。 障害者の場合は障害者控除が適用されるため、控除対象外ではない。 ※2: 配偶者特別控除対象配偶者のうち、源泉控除対象配偶者に該当しない = 非源泉控除対象特別控除対象配偶者。