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生命保険料控除

生命保険料の支払額に対する物的控除(Deduction)。 3つの区分(一般の生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料)ごとに計算し、合計する。 物的控除の中で 計算が最も複雑 な控除である。


3つの区分と制度

区分対象新制度旧制度
一般の生命保険料死亡保険、養老保険等
介護医療保険料医療保険、介護保険、がん保険等なし(旧制度には区分がなかった)
個人年金保険料個人年金保険(税制適格要件あり)

注意: 「3区分 × 2制度」ではない。介護医療保険料は新制度のみのため、組み合わせは 3区分 × 2制度 − 1 = 5通り である。

平成24年(2012)1月1日以降に締結した契約は 新制度、それ以前は 旧制度 が適用される。


控除対象の判定基準: 支払者基準

生命保険料控除の対象となる保険料は、契約者が誰か ではなく、実際に誰が支払ったか で判定される。

  • 給与の支払を受ける人(本人)以外の者(配偶者・子等)が契約者であっても、本人が保険料を支払ったことが明らかであれば控除の対象
  • ただし、受取人の適格要件(下記)は満たす必要がある

例: 妻や子が契約者となっている生命保険契約でも、妻や子に所得がなく、本人がその保険料を支払っている場合は、本人の生命保険料控除の対象となる。

出典: 年末調整Q&A(令和7年分)問8


受取人の適格要件

区分ごとに保険金等の受取人に制限がある(出典: 保険料控除申告書 裏面):

区分受取人の要件
一般の生命保険料保険金等の受取人の 全て が、本人・配偶者・その他の親族であること
介護医療保険料同上
個人年金保険料年金の受取人が 本人又は配偶者 のいずれかであること(親族は不可)

個人年金は受取人の範囲が一般・介護医療と比べて狭い。 ただし、控除証明書が保険会社から発行されている時点で税制適格要件を満たしているものと思われる。


控除額の計算式

新制度(H24.1.1以降の契約)

年間支払保険料控除額
20,000円以下支払保険料の全額
20,000円超〜40,000円以下支払保険料 × 1/2 + 10,000円
40,000円超〜80,000円以下支払保険料 × 1/4 + 20,000円
80,000円超一律40,000円

各区分の上限: 40,000円

旧制度(H23.12.31以前の契約)

年間支払保険料控除額
25,000円以下支払保険料の全額
25,000円超〜50,000円以下支払保険料 × 1/2 + 12,500円
50,000円超〜100,000円以下支払保険料 × 1/4 + 25,000円
100,000円超一律50,000円

各区分の上限: 50,000円


支払保険料等の金額の算出

支払保険料等の金額は以下の式で算出する:

支払保険料等の金額 = その年に支払った保険料の金額 − その年に受けた剰余金や割戻金の額

出典: 国税庁 No.1140 生命保険料控除

マイナスになるケース: 剰余金・割戻金が支払額を上回ると、支払保険料等の金額がマイナスになる。

主契約と特約で保険料区分が異なる場合(例: 主契約が一般、特約が介護医療)、剰余金の分配等の金額は 主契約・特約それぞれの支払保険料等の金額の比に応じて按分し、それぞれの保険料等の金額から差し引く。


同一区分・同一制度の複数契約の合算

同一区分(一般の生命保険料/介護医療保険料/個人年金保険料)かつ同一制度(新制度同士/旧制度同士)の複数契約がある場合、 支払保険料等の金額を合算 してから計算式に投入する。

例: 一般の生命保険料(新制度)の契約が2つ
  契約A: 支払保険料等 +10,000円
  契約B: 支払保険料等  -5,000円(剰余金が支払額を超過)
  → 合算: 5,000円 → この金額で新制度の計算式を適用

異なる制度の契約は合算しない: 新制度と旧制度の契約は別々に計算する。

マイナス契約の選択的不申告リスク

マイナスの支払保険料等を持つ契約がある場合、申告者がその契約を申告せずプラスの契約のみ申告すれば、 本来より大きな控除額を受けられてしまう。しかし控除証明書は契約ごとに発行されるため、 雇用主側で未提出の契約の存在を検知する手段はない。これは紙の年末調整でも同様に存在する構造的なリスクである。


新旧両方がある場合の計算

同一区分(一般の生命保険料 or 個人年金保険料)で新制度と旧制度の両方の契約がある場合、 保険料控除申告書の計算表に従い、以下の3パターンを計算してそれぞれの控除額を算出する:

  • 新制度のみで計算: 上限40,000円
  • 旧制度のみで計算: 上限50,000円
  • 新旧合算で計算: 上限40,000円

保険料控除申告書の計算表では、新制度の控除額(A)と旧制度の控除額(B)をそれぞれ算出した上で、 A + B の合計が40,000円を超える場合は40,000円となる構造になっている。 すなわち、申告者が明示的に「どちらを選択する」というよりは、申告を行う過程で最も有利な計算方法が決まる 仕組みである。

結果として、旧制度のみの方が上限50,000円で有利になるケースがある(旧制度の控除額が40,000円を超える場合)。


合計上限

3区分の控除額を合計する。ただし 合計の上限は120,000円

生命保険料控除の合計 = min(
    一般の生命保険料の控除額 + 介護医療保険料の控除額 + 個人年金保険料の控除額,
    120,000
)

電子的控除証明書との連携

保険料控除の証明書 参照