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親族の基礎概念

年末調整における親族関連のドメイン用語と概念体系。 民法の親族定義から税法上の各カテゴリまでを体系的に整理する。


基礎概念(民法由来)

親族

定義: 6親等内の血族 + 配偶者 + 3親等内の姻族(民法725条)。 税法上のすべての家族関連概念の 最上位概念。 「配偶者と扶養親族」ではなく「親族」が出発点。

血族

定義: 血縁関係にある者。養子縁組による法定血族を含む。 直系血族(親・子・祖父母・孫等)と傍系血族(兄弟姉妹・伯叔父母等)に分かれる。 6親等内が親族の範囲。

姻族

定義: 配偶者の血族、および血族の配偶者。 3親等内が親族の範囲。 例: 配偶者の父母(1親等の姻族)、配偶者の兄弟姉妹(2親等の姻族)

再婚時の連れ子: 子のある者と再婚した場合、その連れ子は 1親等の姻族 に該当する(親等数の図示 参照)。生計一 + 16歳以上 + 合計所得金額要件を満たせば 扶養控除 の対象となる。データモデルでは親族種別を「姻族」として正しく設定する必要がある。

配偶者

定義: 婚姻関係にある者。血族でも姻族でもない、親族の独立カテゴリ。 重要: 税法上、扶養親族には含まれない(明示的に除外)。配偶者控除は扶養控除とは別制度。

事実婚は含まない(法律婚のみ): 税法上の「配偶者」は民法上の婚姻(法律婚)に限定される(所得税法第2条第1項第33号)。事実婚(内縁関係)のパートナーは、配偶者控除・配偶者特別控除の対象にならない。また、住民票に「未届の夫」「未届の妻」等の記載がある事実婚の相手がいる場合、寡婦控除・ひとり親控除にも該当しない(→ 寡婦控除 / ひとり親控除)。

事業専従者

定義: 青色申告者または白色申告者の営む事業に専ら従事する親族。

  • 青色事業専従者: 青色申告者が届出をした上で給与を支払う親族。支払った給与は事業の必要経費に算入できる
  • 白色事業専従者: 白色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族で、年間6月を超える期間、専ら事業に従事する者。事業専従者控除(配偶者86万円、その他50万円)が適用される

扶養親族・控除対象配偶者からの除外: 事業専従者に該当する者は、扶養親族および同一生計配偶者から除外される(所得税法第2条第1項第34号イ)。これは、事業専従者給与または事業専従者控除として事業所得の計算で既に税制上の優遇を受けているため、扶養控除・配偶者控除との二重適用を防ぐ趣旨である。

年末調整での影響: 従業員の配偶者や親族が自営業者の事業専従者である場合、その者について配偶者控除・扶養控除を申告できない。扶養控除等申告書の各欄にも「青色事業専従者として給与の支払を受ける人及び白色事業専従者を除きます。」と記載されている。

生計を一にする

定義: 日常の生活の資(しろ)を共にすること。経済的な生活単位が一つであること。

「生計を一にする」とは、必ずしも同居を要件とするものではありません。 例えば、勤務、修学、療養等の都合上別居している場合であっても、余暇には起居を共にすることを 常例としている場合や、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合には、 「生計を一にする」ものとして取り扱われます。 なお、親族が同一の家屋に起居している場合には、明らかに互いに独立した生活を営んでいると 認められる場合を除き、「生計を一にする」ものとして取り扱われます。

出典: 国税庁「生計を一にする」の意義

「同居」との違い:

  • 「同居」は物理的に一緒に住んでいるかどうか(同居老親等、同居特別障害者で使われる)
  • 「生計を一にする」は経済的な生活単位が一つかどうか(より広い概念)
  • 別居でも送金等があれば「生計を一にする」に該当する
  • 逆に、同居していても互いに独立した生活を営んでいれば該当しない

用途: 以下を含むほぼすべての人的控除の共通要件:

  • 同一生計配偶者・控除対象配偶者の要件
  • 扶養親族の要件
  • ひとり親控除の「生計を一にする子」の要件
  • 障害者控除の前提となる同一生計配偶者/扶養親族の判定
  • 社会保険料控除(生計を一にする親族の保険料を本人が支払った場合)

→ データモデルでは「同居」と「生計を一にする」は別の属性として管理する

親等

定義: 親族間の関係の遠近を表す数値。 値: 1〜6(血族)、1〜3(姻族)

血族の親等の数え方

基本: 本人から親族関係の線を辿るごとに1親等ずつ増える。

直系血族(親子関係の直線):

  • 本人から上または下に世代をたどり、経た世代数 = 親等数
  • 父母 = 1親等、祖父母 = 2親等、曾祖父母 = 3親等 …

傍系血族(共通祖先を経由する関係):

  • 本人から共通の祖先まで上がり、そこから対象者まで下がる。経た線の総数 = 親等数
  • 兄弟姉妹: 本人→父母(1)→兄弟姉妹(2) = 2親等
  • 伯叔父母: 本人→父母(1)→祖父母(2)→伯叔父母(3) = 3親等
  • 従兄弟姉妹: 本人→父母(1)→祖父母(2)→伯叔父母(3)→従兄弟姉妹(4) = 4親等
  • 甥姪: 本人→父母(1)→兄弟姉妹(2)→甥姪(3) = 3親等

姻族の親等の数え方

基本: 婚姻関係の線(本人↔配偶者)はカウントしない。

配偶者の血族:

  • 配偶者の側から線を辿る。配偶者→その血族の線の数 = 親等数
  • 配偶者の父母 = ①(配偶者→父母: 1本)
  • 配偶者の祖父母 = ②(配偶者→父母→祖父母: 2本)
  • 配偶者の兄弟姉妹 = ②(配偶者→父母→兄弟姉妹: 2本)
  • 配偶者の甥姪 = ③(配偶者→父母→兄弟姉妹→甥姪: 3本)

血族の配偶者:

  • 本人の側から血族まで辿った線の数 = 親等数(血族からその配偶者への線はカウントしない)
  • 子の配偶者 = ①(本人→子: 1本)
  • 孫の配偶者 = ②(本人→子→孫: 2本)
  • 兄弟姉妹の配偶者 = ②(本人→父母→兄弟姉妹: 2本)
  • 伯叔父母の配偶者 = ③(本人→父母→祖父母→伯叔父母: 3本)

共通ルール: 姻族の親等 = 婚姻で結ばれた者のうち、一方の血族関係の親等数と同じ。 本人↔配偶者の線も、血族↔その配偶者の線も、親等の計算に含めない。

税法での親族範囲

区分親等の範囲
血族6親等以内昆孫(6)、再従兄弟姉妹(6)まで
姻族3親等以内配偶者の甥姪③、曾孫の配偶者③まで
配偶者親等の概念なし(親族の独立カテゴリ)

直系

定義: 親子関係の連鎖で直接つながる関係。 直系血族の例: 父母(1親等)、祖父母(2親等)、曾祖父母(3親等)、子(1親等)、孫(2親等)、曾孫(3親等)。 直系姻族の例: 配偶者の父母①、配偶者の祖父母②、子の配偶者①。

傍系

定義: 共通の祖先を経由してつながる関係(兄弟方向)。 傍系血族の例: 兄弟姉妹(2親等)、伯叔父母(3親等)、従兄弟姉妹(4親等)、甥姪(3親等)。 傍系姻族の例: 配偶者の兄弟姉妹②、兄弟姉妹の配偶者②。

尊属

定義: 本人より上の世代の者。父母・祖父母・伯叔父母等。 税法での用途:

  • 同居老親等の判定: 老人扶養親族が 直系尊属 かつ同居 → 控除額58万円(その他は48万円) 直系尊属 = 父母・祖父母・曾祖父母等。伯叔父母は傍系尊属なので該当しない。

卑属

定義: 本人より下の世代の者。子・孫・甥姪等。 税法での用途:

  • ひとり親控除の判定: 生計を一にする が要件。子は直系卑属の1親等。 孫(2親等)や甥姪(3親等の傍系卑属)は「子」に該当しない。 → ひとり親控除は「子」に限定されており、「卑属」一般ではない点に注意。

親等数の図示

出典: 国税庁 No.1180 扶養控除 Q&A 親族の範囲図

(1)〜(6) は 血族 の親等数、①〜③ は 姻族 の親等数。

血族の親等数

                                    尊属

  高祖父母の祖父母(6)                │
      │                              │     傍系血族
  高祖父母の父母(5)                  │     ─────────
      │                    ┌─────── 高祖父母の兄弟姉妹(6)
  高祖父母(4) ─────────────┤
      │                    └─────── 曾祖伯叔父母(5) ── 従祖伯叔父母(6)
  曾祖父母(3) ─────────────┬─────── 伯叔祖父母(4)
      │                    │
  祖父母(2) ───────────────┤        伯叔父母(3) ────── 従伯叔父母(5)
      │                    │
  父母(1) ─────────────────┤        兄弟姉妹(2) ────── 従兄弟姉妹(4) ── 再従兄弟姉妹(6)
      │                    │
     本人                  │        甥姪(3) ────────── 従甥姪(5)
      │                    │
  子(1) ───────────────────┤        姪孫(4) ────────── 従姪孫(6)
      │                    │
  孫(2) ───────────────────┤        曾姪孫(5)
      │                    │
  曾孫(3)                  └─────── 玄姪孫(6)

  玄孫(4)                         卑属
      │                             │
  来孫(5)

  昆孫(6)

姻族の親等数

        直系姻族                              傍系姻族
        ────────                              ────────
  配偶者の曾祖父母 ③                    配偶者の伯叔父母 ③
  曾祖父の後妻/曾祖母の後夫 ③

  配偶者の祖父母 ②                      伯叔父母の配偶者 ③
  祖父の後妻/祖母の後夫 ②              配偶者の兄弟姉妹 ②

  配偶者の父母 ①                        兄弟姉妹の配偶者 ②
  父の後妻/母の後夫 ①
                                              配偶者の甥姪 ③
     配偶者 ─── 本人
                                              甥姪の配偶者 ③
  配偶者の連れ子 ①
  子の配偶者 ①

  配偶者の孫 ②
  孫の配偶者 ②

  配偶者の曾孫 ③
  曾孫の配偶者 ③

親等の数え方の確認:

  • 配偶者の兄弟姉妹 : 配偶者→(配偶者の)父母→(配偶者の)兄弟姉妹 = 2本 → ②
  • 兄弟姉妹の配偶者 : 本人→父母→兄弟姉妹 = 2本 → ②(兄弟姉妹→その配偶者の線はカウントしない)
  • 伯叔父母の配偶者 : 本人→父母→祖父母→伯叔父母 = 3本 → ③
  • いずれも婚姻関係の線はカウントしないというルールで同じ結果になる