令和4年施行
令和3年度・令和4年度税制改正で決定され、令和4年分(2022年)の所得税から適用された改正の概要。 住宅ローン控除制度の抜本的見直しと退職所得課税の適正化が中心。 また、R4年度の地方税法改正により、R5年1月から扶養控除等申告書に「退職手当等を有する配偶者・扶養親族」の記載欄が追加された。
住宅ローン控除制度の抜本見直し
改正の趣旨(R4年度改正)
会計検査院から住宅ローン控除の「逆ざや」(借入金利 < 控除率1%)が指摘されたこと、および2050年カーボンニュートラルに向けた省エネ住宅推進のため、制度を抜本的に見直し。
主要な変更点
控除率の引下げ
| 項目 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 控除率 | 1.0% | 0.7% |
合計所得金額の要件の引下げ
| 項目 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 合計所得金額 | 3,000万円以下 | 2,000万円以下 |
適用期限の延長
| 項目 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 入居期限 | R3年12月末 | R7年12月末(4年延長) |
住宅区分の細分化(2区分→4区分)
省エネ性能に応じた4段階の住宅区分を新設。性能が高いほど借入限度額が大きい。
新築・買取再販住宅:
| 住宅区分 | R4・R5年入居 | R6・R7年入居 | 控除期間 |
|---|---|---|---|
| 認定住宅(長期優良・低炭素) | 5,000万円 | 4,500万円 | 13年 |
| ZEH水準省エネ住宅 | 4,500万円 | 3,500万円 | 13年 |
| 省エネ基準適合住宅 | 4,000万円 | 3,000万円 | 13年 |
| その他の住宅 | 3,000万円 | 2,000万円 | R4・5: 13年 / R6・7: 10年 |
既存住宅:
| 住宅区分 | R4〜R7年入居 | 控除期間 |
|---|---|---|
| 認定住宅等 | 3,000万円 | 10年 |
| その他の住宅 | 2,000万円 | 10年 |
築年数要件の見直し
| 項目 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 既存住宅の要件 | 耐火25年 / 非耐火20年 | 昭和57年以降建築(新耐震基準適合の簡易判定) |
住民税からの控除
所得税額から控除しきれない額は、課税総所得金額等の 5%(最高9.75万円) で個人住民税から控除。
その後の拡充
子育て世帯等への借入限度額上乗せ → R6改正
→ 現行制度は 住宅借入金等特別控除 参照
退職所得課税の適正化(一般従業員への拡大)
改正の趣旨(R3年度改正)
短期間の勤務に対して高額の退職金を受け取る事例(短期退職手当)への対応。 H25年分で法人役員等に限定されていた措置を、一般従業員にも拡大(ただし300万円超の部分に限定)。
改正内容
勤続年数5年以下の法人役員等以外の退職金について、退職所得控除後の残額のうち 300万円を超える部分 の2分の1課税を廃止。
| 区分 | 勤続5年超 | 勤続5年以下・300万円以下 | 勤続5年以下・300万円超 |
|---|---|---|---|
| 法人役員等 | 1/2課税 | 全額課税 | 全額課税 |
| 一般従業員 | 1/2課税 | 1/2課税 | 全額課税(新設) |
退職所得 = 退職所得控除後の金額のうち:
300万円以下の部分 → x 1/2
300万円超の部分 → x 1(全額課税)- 令和4年分以後の所得税について適用
改正の経緯
| 適用年分 | 対象 | 決定した改正年度 |
|---|---|---|
| H25 (2013)〜 | 法人役員等・勤続5年以下 → 全額課税 | → H25改正 |
| R4 (2022)〜 | 一般従業員・勤続5年以下・300万円超 → 全額課税 | R3年度改正 |
住宅ローン控除の13年特例延長(R3年度改正)
改正内容
消費税率10%引上げに伴う控除期間13年間の特例を延長。面積要件の緩和も実施。
- 契約期限: 注文住宅 R2.10〜R3.9 / 分譲住宅 R2.12〜R3.11
- 入居期限: R4年末まで
- 面積要件緩和: 合計所得金額1,000万円以下の者に限り、40平米以上に緩和(通常は50平米以上)
退職手当等を有する配偶者・扶養親族の申告欄追加(R4年度改正・地方税法)
背景
所得税と住民税で「合計所得金額」の定義が異なる。
| 税目 | 退職所得の扱い |
|---|---|
| 所得税 | 現年分離課税される退職所得を合計所得金額に 含まない |
| 住民税 | 退職所得を合計所得金額に 含む(退職所得金額及び山林所得金額を含む) |
この差異により、配偶者や扶養親族が退職手当等を受けた場合に、所得税上は扶養要件(48万円以下)を満たすが住民税上は満たさないケースが生じる。地方団体が賦課課税に必要な情報を把握するために、申告書の様式変更が行われた。
改正内容
所得税法上の計算ロジックに変更はない。 住民税側の合計所得金額の整備に伴う、申告書様式の変更。
具体的な様式変更:
給与所得者の扶養控除等申告書(所法194)
- 「退職手当等を有する配偶者・扶養親族」欄を追加
- 退職手当等を有する場合の合計所得金額の見積額を記載
- 「特定配偶者の氏名」欄を追加(住民税の源泉控除対象配偶者の範囲が異なるため)
公的年金等受給者の扶養親族等申告書(所法203の6)
- 同様に退職手当等を有する配偶者・扶養親族の記載欄を追加
給与支払報告書・公的年金等支払報告書
- 退職手当等を有する配偶者・扶養親族の情報を記載要領に追加
確定申告書
- 付記事項に退職手当等を有する一定の配偶者・扶養親族の氏名等を追加
「特定配偶者」とは
住民税において新設された概念。所得税における源泉控除対象配偶者と同様の範囲だが、退職手当等を有する者を含む。
- 納税義務者の合計所得金額が900万円以下
- 配偶者(退職手当等に係る所得を有する者を含む)の合計所得金額が95万円以下
所得税法上は配偶者控除・配偶者特別控除の対象とならない者でも、住民税法上は申告書に記載が必要となるケースがある。
施行時期
- 令和5年(2023年)1月1日以後 に支払を受けるべき給与等・公的年金等について提出する申告書から適用
- 住民税は令和4年度分以降の個人住民税から適用
出典
- 財務省 令和4年度税制改正の解説「地方税法等の改正」 p811-814「3 個人住民税における合計所得金額に係る規定の整備等」
押印義務の廃止(R3年度改正)
改正内容
税務関係書類(実印・印鑑証明を要するものを除く)の押印義務を廃止。
年末調整で従業員が提出する各種申告書(扶養控除等申告書、保険料控除申告書等)の押印が不要になった。
出典
- 財務省「令和3年度税制改正」パンフレット(PDF)
- 財務省「令和4年度税制改正」パンフレット(PDF)
- 財務省 令和4年度税制改正の解説「地方税法等の改正」 p811-814 -- 退職手当等を有する配偶者・扶養親族の申告