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年税額計算

年末調整における年税額(年調年税額)の計算は、段階的な処理として整理できる。

出典: 国税庁 年末調整のしかた(令和7年分) p37-39


計算フロー全体像

① 給与等の総額② 給与所得控除額③ 給与所得控除後の給与等の金額(① − ②)④ 所得金額調整控除額⑤ 調整控除後の給与所得の金額(③ − ④)⑥ 物的控除社会保険料・小規模企業共済等生命保険料・地震保険料⑦ 人的控除配偶者・扶養・障害者基礎・寡婦・ひとり親等⑧ 所得控除の合計額(⑥ + ⑦)⑨ 課税給与所得金額(⑤ − ⑧、1,000円未満切捨て)⑩ 算出所得税額(速算表)⑪ 住宅借入金等特別控除額(税額控除)⑫ 年調所得税額(⑩ − ⑪、最低0円)⑬ 年調年税額(⑫ × 102.1%、100円未満切捨て)⑭ 過不足額(⑬ − 既徴収税額)
① 給与等の総額② 給与所得控除額③ 給与所得控除後の給与等の金額(① − ②)④ 所得金額調整控除額⑤ 調整控除後の給与所得の金額(③ − ④)⑥ 物的控除社会保険料・小規模企業共済等生命保険料・地震保険料⑦ 人的控除配偶者・扶養・障害者基礎・寡婦・ひとり親等⑧ 所得控除の合計額(⑥ + ⑦)⑨ 課税給与所得金額(⑤ − ⑧、1,000円未満切捨て)⑩ 算出所得税額(速算表)⑪ 住宅借入金等特別控除額(税額控除)⑫ 年調所得税額(⑩ − ⑪、最低0円)⑬ 年調年税額(⑫ × 102.1%、100円未満切捨て)⑭ 過不足額(⑬ − 既徴収税額)

各ステップの詳細

① 給与等の総額

その年中に支払の確定した給与等の総額。1月〜12月の給与・賞与の合計。

収入の確定する日(支給日基準)

「支払の確定した」の判定基準は 収入すべき時期(=収入の確定する日)による:

ケース収入すべき時期
契約・慣習で 支給日が定められているその 支給日
支給日が定められていない実際に支給を 受けた日

このため、12月分の勤務実績に基づく給与であっても、支給日が翌年1月であれば 翌年分 の給与となり、本年の年末調整の対象には含まない。

出典: 年末調整Q&A(令和7年分)問2

注意: 給与等の総額が 2,000万円超 の場合は年末調整の対象外。 → 年末調整の対象者 を参照

② 給与所得控除額

給与等の総額(①)に応じて決まる控除額。

  • 給与収入660万円未満: 国税庁発行の「給与所得控除後の給与等の金額の表」(所得税法別表第五、4,000円刻みのルックアップテーブル)から逆算
  • 給与収入660万円以上: 速算表の算式で計算する(1円未満切捨て)

→ 速算表・別表の詳細は 給与所得 を参照

③ 給与所得控除後の給与等の金額

① − ② の金額。

④ 所得金額調整控除額

給与等の収入金額が850万円超で、かつ以下のいずれかに該当する場合に適用:

  • 本人が特別障害者
  • 23歳未満の扶養親族がいる
  • 特別障害者である同一生計配偶者または扶養親族がいる

計算式: (給与等の収入金額〔上限1,000万円〕 − 850万円) × 10%(最高15万円)

→ 詳細は 所得金額調整控除 を参照

⑤ 調整控除後の給与所得の金額

③ − ④ の金額。 所得金額調整控除の適用がない場合は、③の金額がそのまま⑤となる。

⑥ 物的控除(Deduction)

  • 社会保険料控除
  • 小規模企業共済等掛金控除
  • 生命保険料控除
  • 地震保険料控除

⑦ 人的控除(Exemption)

  • 配偶者控除 / 配偶者特別控除
  • 特定親族特別控除
  • 扶養控除
  • 障害者控除
  • 基礎控除
  • 寡婦控除 / ひとり親控除 / 勤労学生控除

→ 各控除の詳細は 控除 を参照

⑧ 所得控除の合計額

⑥ + ⑦ の合計。

⑨ 課税給与所得金額

⑤ − ⑧ の金額。1,000円未満切捨て。 マイナスの場合は0円。

⑩ 算出所得税額(速算表による計算)

課税給与所得金額(⑨)に対して、速算表を適用して算出所得税額を求める。

⑪ (特定増改築等) 住宅借入金等特別控除額

住宅借入金等特別控除申告書の提出がある場合に控除。 所得控除ではなく税額控除 である点に注意。

→ 詳細は 住宅借入金等特別控除 を参照

⑫ 年調所得税額

⑩ − ⑪ の金額。マイナスにならない(最低0円)。 住宅借入金等特別控除額が算出所得税額を超える場合(控除しきれない場合)、残額は住民税から控除される仕組みがある。

⑬ 年調年税額

⑫ × 102.1%(復興特別所得税を含む)。100円未満切捨て

復興特別所得税: 東日本大震災の復興財源として平成25年(2013)〜令和19年(2037)の25年間、所得税額の2.1%が上乗せされる。

⑭ 過不足額

⑬ − その年中に徴収した源泉所得税及び復興特別所得税の合計額。

  • プラス → 不足額(追加徴収)
  • マイナス → 過納額(還付)

算出所得税額の速算表

令和7年分の年末調整に使用する速算表。所得税法の税率構造そのものである。

課税給与所得金額 (A)税率 (B)控除額 (C)税額 = (A)×(B) − (C)
1,950,000円以下5%(A) × 5%
1,950,000円超〜3,300,000円以下10%97,500円(A) × 10% − 97,500
3,300,000円超〜6,950,000円以下20%427,500円(A) × 20% − 427,500
6,950,000円超〜9,000,000円以下23%636,000円(A) × 23% − 636,000
9,000,000円超〜18,000,000円以下33%1,536,000円(A) × 33% − 1,536,000
18,000,000円超〜18,050,000円以下40%2,796,000円(A) × 40% − 2,796,000

注意:

  • 課税給与所得金額の 1,000円未満は切り捨て てから速算表を適用する
  • 年末調整の対象は給与等の総額2,000万円以下のため、速算表の最上位(40%の上位)に達するケースは稀
  • 速算表の「控除額」は累進課税のギャップを調整するための技術的な値であり、「所得控除」とは無関係

速算表の年度依存性

速算表の税率・区分は 所得税法の改正 によって変わりうる。 現行の速算表は長期間変更されていないが、復興特別所得税の乗率102.1%は別途変動する可能性がある。

速算表は所得税法改正時に改定される可能性があるため、年度ごとの値として管理が必要。


端数処理の完全なまとめ

年末調整の計算過程で発生する端数処理は、対象によって切捨てと切上げが混在 しており、統一的なルールではない。

出典: 年末調整のしかた(令和7年分)各該当箇所

#対象端数処理パイプラインのステップ
1給与所得控除後の給与等の金額(算式計算、660万円以上の場合)1円未満切捨て
2所得金額調整控除額1円未満切上げ
3生命保険料控除額1円未満切上げ
4地震保険料控除額1円未満切上げ
5住宅借入金等特別控除額100円未満切捨て
6課税給与所得金額1,000円未満切捨て
7年調所得税額(住宅ローン控除で控除しきれない部分)0に切捨て(マイナスにならない)
8年調年税額(年調所得税額×102.1%)100円未満切捨て

パターンの整理:

  • 切上げ: 控除額の計算(生命保険料・地震保険料・所得金額調整控除)→ 納税者有利の方向
  • 切捨て: 課税所得・税額の計算 → 納税者有利の方向
  • いずれも納税者有利の方向に丸められる設計意図が見える

計算例:

所得金額調整控除: (8,765,432 − 8,500,000) × 10% = 26,543.2 → 26,544円(切上げ)
給与所得控除後:   7,654,321 × 90% − 1,100,000 = 5,788,888.9 → 5,788,888円(切捨て)
課税給与所得金額: 6,973,000 − 4,786,102 = 2,186,898 → 2,186,000円(1,000円未満切捨て)
年調年税額:       44,600 × 102.1% = 45,536.6 → 45,500円(100円未満切捨て)

過不足額の精算

過納額(還付)の場合

年調年税額 < 既徴収税額 → 差額を還付する。

精算方法:

  1. 翌月以降(通常1月)に源泉徴収する税額から差し引く
  2. 差し引ききれない場合は翌々月以降も繰り越す
  3. それでも差し引ききれない場合は税務署に「年末調整過納額還付請求書」を提出して還付を受ける

→ 精算の経理処理・納付書への反映方法については 過不足税額の精算実務 を参照

不足額(追加徴収)の場合

年調年税額 > 既徴収税額 → 差額を追加徴収する。

精算方法:

  1. 年末調整をする月分の給与から徴収
  2. なお不足額が残るときは、その後に支払う給与から順次徴収

繰延徴収(70%ルール)

出典: 年末調整のしかた(令和7年分)p41

年末調整をする月分の給与から不足額を徴収すると、その月の税引手取給与(賞与がある場合はその税引手取額を含む)が、本年1月から年末調整を行った月の前月までの税引手取給与の平均月額の70%未満となる場合は、不足額を繰り延べて徴収できる。

条件:

年末調整月の税引手取給与 < 1月〜前月の平均税引手取給与 × 70%

手続き:

  1. 「年末調整による不足額徴収繰延承認申請書」を作成
  2. 給与の支払者の所轄税務署に提出し、承認を受ける
  3. 承認後、不足額を翌年1月と2月に繰り延べて徴収

重要な注意:

  • 繰延の対象は年末調整による上乗せ不足額のみ。年末調整をする月分の給与に対する通常の源泉徴収税額は繰延の対象にならない
  • したがって、繰延を受ける人の年末調整月分の給与についても、通常の税額計算を行った上で年末調整を実施する
  • 12月中に精算しきれず翌年1月・2月に繰り越す場合は、その月の所得税徴収高計算書(納付書)に記入する

過不足額が生じる典型的なケース

ケース過不足の方向
年の途中で扶養親族が増えた過納額(還付)
年の途中で本人が障害者・寡婦・ひとり親に該当した過納額(還付)
賞与が年間を通じて比較的少なかった過納額(還付)
年の途中で就職し1年を通じて勤務していない過納額(還付)
住宅借入金等特別控除の適用がある過納額(還付)
配偶者控除・配偶者特別控除の適用がある過納額(還付)
年の途中で扶養親族が減った不足額(追加徴収)

年始調整との関連: 確定事実に基づいて計算するため、見込みベースの月次源泉徴収との乖離は発生するが、年末調整後の再調整は大幅に減少する。

→ 年末調整後の再調整については 再年調 を参照


年度による計算パラメータの違い

年税額計算に使用するパラメータは年度によって異なる。

  • 速算表(税率区分): 現行は長期間変更なし
  • 復興特別所得税率(2.1%): 期間終了後は乗率変更の可能性あり
  • 給与所得控除テーブル: 最低保障額65万円
  • 各所得控除額: 年度ごとに異なる(控除 参照)