出国時年末調整
従業員が海外赴任・帰国等により非居住者となる場合に行う年末調整(出国時年調)の詳細を整理する。
出国時年調の位置づけは → 従業員の雇用状態 § 海外赴任 を参照。
対象者
出国時年末調整は、年の中途で非居住者となる従業員に対して行う(所得税法第190条第1号ロ)。
具体的には:
- 1年以上の予定で海外に赴任する日本人従業員
- 退職して本国に帰国する外国人従業員(→ 外国人従業員の年末調整)
- その他の理由で国内に住所・居所を有しなくなる従業員
→ 年末調整の対象者 も参照
対象期間の打ち切りルール
通常の年末調整は1月〜12月の給与を対象とするが、出国時年調は1月〜出国時点までに打ち切られる。
| 項目 | 通常の年末調整 | 出国時年末調整 |
|---|---|---|
| 対象期間 | 1月1日〜12月31日 | 1月1日〜出国日 |
| 対象給与 | 年間の給与総額 | 出国時点までに支払われた(支払うべきことが確定した)給与 |
| 扶養親族等の判定時期 | その年の12月31日の現況 | 出国時の現況 |
| 控除証明書の基準 | 年末時点で確定した額 | 出国時点までに支払った額 |
「支払うべきことが確定した給与」の範囲
- 出国日までに支給日が到来した給与
- 出国日時点で支給日は未到来だが、支払うべきことが確定している給与(例: 月末締め翌月払いで、出国月の給与が未支給の場合)
- 出国後に支給日が到来する賞与: 出国前に支給額が確定していれば対象に含める
精算タイミング
出国時年調は出国前に完了する必要がある。
実務上のスケジュール
- 出国日の確定
- 出国時点までの給与・賞与の確定
- 扶養控除等申告書の内容確認(出国時の現況で判定)
- 各種控除証明書の収集
- 年末調整の計算・過不足税額の精算
- 源泉徴収票の発行
- 出国
注意: 通常の年末調整と異なり、出国日までに全ての手続きを完了する必要があるため、スケジュールがタイトになりやすい。出国日が決まり次第、早めに準備を開始する。
控除の適用
出国時の現況で判定する控除
- 扶養控除・配偶者控除: 出国時点での所得見積額で判定する
- 障害者控除・寡婦控除・ひとり親控除・勤労学生控除: 出国時の現況で判定
- 基礎控除: 出国時までの給与に基づく合計所得金額の見積額で判定
出国時点までの支払額で計算する控除
- 社会保険料控除: 出国時点までに給与から控除された社会保険料の額
- 生命保険料控除・地震保険料控除: 出国時点までに支払った保険料の額
- 小規模企業共済等掛金控除: 出国時点までに支払った掛金の額
- 住宅借入金等特別控除: 適用要件を満たせば適用可(非居住者期間中は原則不可だが、一定の場合に特例あり)
非居住者期間中の給与の取扱い
出国後(非居住者となった後)の給与は、出国時年調には含めない。
| 給与の種類 | 課税関係 | 年末調整 |
|---|---|---|
| 国内勤務に対応する給与(国内源泉所得) | 20.42%の源泉徴収(非居住者に対する税率) | 対象外 |
| 海外勤務に対応する給与(国外源泉所得) | 日本では課税対象外 | 対象外 |
- 非居住者に支払う給与のうち国内源泉所得に該当するものは、20.42%(所得税20% + 復興特別所得税0.42%)の税率で源泉徴収する
- 租税条約により免税となる場合がある(→ 租税条約に基づく免税)
帰任時の処理フロー
海外赴任から帰任し、再び居住者となった場合の処理。
帰任年の年末調整
- 帰任日以降の給与のみが年末調整の対象
- 非居住者期間中に支払われた国内源泉所得は年末調整に含めない(確定申告で精算)
- 扶養親族等の判定は帰任年の12月31日の現況で行う(通常の年末調整と同じ)
帰任年の処理の流れ
出国年と帰任年が同一年の場合
同一年内に出国→帰任した場合:
- 出国時年調で精算した分は再計算の対象外
- 帰任後の居住者期間の給与について、改めて年末調整を行う
- 実務上は確定申告で年間の所得税を精算するケースが多い
納税管理人の選任
非居住者となる従業員が、出国後に所得税に関する申告・申請・届出等を行う必要がある場合、出国前に納税管理人を選任して所轄税務署に届け出る必要がある(国税通則法第117条)。
納税管理人が必要なケース
| ケース | 説明 |
|---|---|
| 確定申告が必要な場合 | 出国時年調で精算しきれない所得(不動産所得等)がある場合 |
| 非居住者期間中に国内源泉所得がある場合 | 国内不動産の賃貸収入等 |
| 還付申告を行う場合 | 源泉徴収された税額の還付を受ける場合 |
納税管理人の届出
- 届出書: 「所得税・消費税の納税管理人の届出書」
- 届出先: 出国前の納税地の所轄税務署
- 届出時期: 出国前(出国後でも届出は可能だが、出国前が望ましい)
- 納税管理人になれる者: 国内に住所等を有する個人または法人(親族、税理士、勤務先の会社等)
企業の実務対応
- 海外赴任の場合、赴任先から確定申告が必要になることが多く、勤務先の企業が納税管理人となるケースが一般的
- 外国人従業員の帰国の場合、税理士や知人を納税管理人に選任するか、帰国前に税務上の精算を完了させる