年末調整の対象者
概要
年末調整(年始調整)は、すべての給与所得者に対して行われるわけではない。 控除計算の前提として、まず「この従業員が年末調整の対象かどうか」を判定する必要がある。
根拠法令: 所得税法第190条
対象者の条件
前提条件(必須)
- 扶養控除等申告書を提出している(=甲欄適用者)
- 提出していない人は乙欄適用 → 年末調整の対象外
- 扶養控除等申告書は主たる給与の支払者1社にのみ提出可能
- 居住者である(非居住者は対象外)
12月に行う年末調整の対象者
以下の 両方 を満たす人:
- 1年を通じて勤務している人、または年の中途で就職し年末まで勤務している人
- 本年中に支払うべきことが確定した 給与の総額が2,000万円以下
年の中途で退職した場合に対象となるケース
以下の いずれか に該当する場合は、退職時に年末調整を行う:
- 非居住者となった(海外転勤等)
- 死亡により退職した
- 著しい心身の障害のために退職した(再就職の見込みがない場合)
- 12月に支給されるべき給与等の支払を受けた後に退職した
- パートタイマー等で、本年中の給与総額が 123万円以下(退職後に他の勤務先から給与を受ける見込みがない場合)
対象外となる条件
| 条件 | 理由 |
|---|---|
| 給与の総額が 2,000万円超 | 所得税法190条の明文規定 |
| 扶養控除等申告書を 未提出(乙欄適用者) | 年末調整の前提条件を満たさない |
| 災害減免法 の適用を受けた人 | 徴収猶予・還付を受けているため |
| 非居住者 | 所得税法190条は居住者を対象 |
| 年の中途で退職(上記5ケースに該当しない) | 確定申告で精算 |
対象外の従業員に対する義務
年末調整の対象外であっても、以下は必要:
- 源泉徴収票の発行(年末調整「済」ではなく「未済」として)
- 給与データ(支払金額、源泉徴収税額等)の記録
- ただし各種控除の計算・申告は行わない
2,000万円の判定と基礎控除2,500万円の関係
- 年末調整の対象外: 給与収入 2,000万円超
- 基礎控除がゼロになる: 合計所得金額 2,500万円超
- 年末調整の対象者の範囲内(給与収入2,000万円以下)では、基礎控除がゼロになることは実質的にない
- 給与収入2,000万円 → 給与所得控除後の金額 ≒ 1,805万円(2,500万円に遠く及ばない)
- ただし、給与以外の所得がある場合は合計所得金額が2,500万円を超える可能性はある
- この場合でも年末調整自体は行う(給与収入が2,000万円以下なら)
- 基礎控除はゼロで計算される
判定基準の注意点
- 判定基準は「給与所得」ではなく「給与の総額(=給与収入)」が2,000万円
- 中途退職者には5つの例外ケースがある(上記参照)
- 災害減免法の適用者は対象外
- 非居住者は対象外
中途就職者の年末調整
年の中途で就職した従業員について、年末調整で前職分の給与データを合算する際の要件とルール。
出典: 国税庁 年末調整のしかた(令和7年分)p36, p28
適用条件
年の中途で就職した人で、就職前に他の給与の支払者に扶養控除等(異動)申告書を提出して支払を受けていた給与がある場合、前職分の給与を含めて年末調整を行う。
前提: 前職で扶養控除等申告書を提出していた = 前職で甲欄適用(主たる給与)だったことを意味する。
→ 前職で申告書を提出していなかった人(乙欄適用 = 従たる給与)の前職給与は、年末調整の合算対象にならない。
前職の源泉徴収票から取り込む項目
前職分の「給与所得の源泉徴収票」から以下の3項目を現勤務先の給与と合算する:
| # | 項目 | 集計方法 |
|---|---|---|
| 1 | 給与の総額 | 前職 + 現職を合算 |
| 2 | 徴収税額(源泉所得税額) | 前職 + 現職を合算 |
| 3 | 社会保険料等(給与控除分) | 前職 + 現職を合算 |
前職源泉徴収票が未提出の場合
前職の源泉徴収票による確認ができるまでは、その人の年末調整は見合わせる。
「前職分の給与とその徴収税額については、その人が前の給与の支払者から交付を受けた 「給与所得の源泉徴収票」などで確認することになりますが、その確認ができるまでは その人の年末調整は見合わせてください。」 — 年末調整のしかた(令和7年分)p36
源泉徴収票が年末調整の期限までに提出されない場合、その従業員は確定申告に回すことになる。