災害被害者に対する税の減免・猶予
災害により住宅や家財に被害を受けた従業員に対しては、源泉所得税の徴収猶予や還付の制度がある。年末調整において、災害減免法の適用を受けた従業員は年末調整の対象外となるため、その判定と処理が必要になる。
出典:
災害に関する2つの制度
災害を受けた場合、以下の2つの制度がある。いずれか有利な方を選択できる(併用不可)。
| 制度 | 根拠法 | 適用方法 | 概要 |
|---|---|---|---|
| 雑損控除 | 所得税法第72条 | 確定申告 | 損失額を所得から控除(3年繰越可) |
| 災害減免法による軽減免除 | 災害減免法 | 確定申告 | 所得税額そのものを軽減・免除 |
いずれも年末調整では処理できず、従業員本人が確定申告で適用を受ける。
→ 確定申告との境界 参照
災害減免法による軽減免除
適用要件
以下のすべてを満たすこと。
- 災害により住宅または家財に損害を受けた
- 損害額が住宅または家財の価額の 1/2以上
- その年の合計所得金額が 1,000万円以下
軽減・免除の内容
| 合計所得金額 | 軽減・免除の内容 |
|---|---|
| 500万円以下 | 所得税額の 全額免除 |
| 500万円超〜750万円以下 | 所得税額の 1/2軽減 |
| 750万円超〜1,000万円以下 | 所得税額の 1/4軽減 |
源泉所得税の徴収猶予
災害減免法の適用を受ける場合に加え、災害による被害を受けた場合に給与等に対する源泉所得税の徴収猶予が認められる。
徴収猶予の仕組み
- 従業員が「源泉所得税及び復興特別所得税の徴収猶予・還付申請書」を給与の支払者(会社)に提出
- 税務署長の承認を受ける
- 承認後、災害のあった日以後に支払う給与から源泉徴収を行わない(または減額する)
猶予の範囲
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 猶予対象 | 災害のあった日以後に支払う給与等に対する源泉所得税 |
| 猶予期間 | 災害のあった日から、その年の12月31日まで |
| 猶予税額 | 災害減免法の軽減・免除相当額 |
徴収猶予を受けた税額の精算
猶予された源泉所得税は、年末調整では精算しない。従業員が確定申告で精算する。
源泉所得税の還付
災害発生前にすでに源泉徴収されていた税額についても、災害減免法の適用により税額が減免される場合、還付を受けられる。
| 区分 | 還付の方法 |
|---|---|
| 年の途中で災害を受けた場合 | 災害発生前の給与から徴収済みの源泉所得税のうち、減免相当額を還付 |
| 還付の手続き | 従業員が税務署に「源泉所得税及び復興特別所得税の徴収猶予・還付申請書」を提出 |
年末調整との関係
年末調整の対象外
災害減免法の適用を受けた(または受ける見込みの)従業員は、年末調整の対象外となる(所得税法第190条)。
| 処理 | 内容 |
|---|---|
| 年末調整 | 行わない |
| 源泉徴収票 | 年末調整「未済」として発行する |
| 確定申告 | 従業員本人が行う |
源泉徴収票への記載
災害減免法の適用を受けた場合、源泉徴収票の摘要欄に以下を記載する。
- 「災害者」に該当する旨
- 徴収猶予税額がある場合はその金額
→ 源泉徴収票 の摘要欄を参照
雑損控除との選択
| 比較項目 | 雑損控除 | 災害減免法 |
|---|---|---|
| 対象 | 災害・盗難・横領 | 災害のみ |
| 所得制限 | なし | 合計所得金額1,000万円以下 |
| 控除方法 | 所得控除(所得から差引き) | 税額の軽減・免除 |
| 繰越 | 3年間 繰越可 | 繰越なし(その年限り) |
| 有利なケース | 損失額が大きい・所得が高い場合 | 所得が500万円以下で全額免除となる場合 |
一般的に、損失額が大きく複数年にわたり控除が必要な場合は雑損控除が有利、損失額に対して所得が低い場合は災害減免法が有利。