納期の特例
常時10人未満の従業員に給与を支払う事業者が利用できる、源泉所得税の納付に関する特例制度。中小企業向けSaaSとして重要な制度である。
出典:
通常の納付ルール
源泉所得税は、給与等から源泉徴収した月の 翌月10日 までに国に納付する義務がある(所得税法第181条・第183条)。
| 徴収月 | 納期限 |
|---|---|
| 1月分 | 2月10日 |
| 2月分 | 3月10日 |
| … | … |
| 12月分 | 1月10日 |
毎月の納付手続は事業者にとって事務負担が大きいため、一定の要件を満たす小規模事業者には特例が設けられている。
納期の特例の概要
適用要件
- 給与の支払を受ける者が 常時10人未満 であること
- 「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を所轄税務署に提出し、承認を受けること
納付回数と期間
特例の適用を受けると、年2回の納付で足りる。
| 期間 | 対象月 | 納期限 |
|---|---|---|
| 上半期 | 1月〜6月に徴収した源泉所得税 | 7月10日 |
| 下半期 | 7月〜12月に徴収した源泉所得税 | 翌年1月20日 |
対象となる源泉所得税
特例の対象は以下の源泉所得税に限られる。
- 給与・賞与 に対する源泉所得税
- 退職手当等 に対する源泉所得税
- 税理士・弁護士・司法書士等 への報酬に対する源泉所得税
上記以外の報酬・料金等(例: 原稿料、講演料、デザイン料等)に対する源泉所得税は特例の対象外であり、翌月10日までに通常どおり納付する必要がある。
申請手続
申請書の提出
「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を所轄税務署に提出する。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 提出先 | 所轄税務署 |
| 提出期限 | 随時(届出制ではなく承認制だが、実務上は提出月の翌月末日に承認があったものとみなされる) |
| 手数料 | なし |
承認の効力発生
- 申請書を提出した月の 翌月末日 に承認があったものとみなされる(所得税法第217条)
- 申請書を提出した月に徴収した源泉所得税は、翌月10日までに通常どおり納付する必要がある
例: 4月15日に申請書を提出した場合:
| 月 | 取扱い |
|---|---|
| 4月分 | 5月10日までに通常納付(特例の対象外) |
| 5月分 | 5月末日に承認みなし → 特例の対象 |
| 5月・6月分 | 7月10日までに納付 |
年末調整との関係
下半期の納付と年末調整
納期の特例適用者は、7月〜12月に徴収した源泉所得税を翌年 1月20日 までに納付する。この期間に年末調整が行われるため、年末調整の過不足額は下半期の納付に反映される。
納付書の記載
納期の特例用の納付書(所得税徴収高計算書(納期特例分))を使用する。
| 欄 | 記載内容 |
|---|---|
| 支給年月日 | 7月〜12月の最初の支給日〜最後の支給日 |
| 人員 | 7月〜12月の各月の人員の延べ人数 |
| 支給額 | 7月〜12月の支給額の合計 |
| 税額 | 7月〜12月の源泉徴収税額の合計 |
| 年末調整による超過税額 | 年末調整の還付額 |
| 年末調整による不足税額 | 年末調整の追加徴収額 |
| 本税 | 税額 − 超過税額 + 不足税額 |
→ 納付書への反映の詳細は 過不足税額の精算実務 を参照
特例の取りやめ
要件を満たさなくなった場合
給与の支払を受ける者が常時10人以上になった場合は、特例の要件を満たさなくなる。
- 「源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなったことの届出書」を提出する
- 届出書を提出した月の翌月から通常の納期(翌月10日)に戻る
- 届出書を提出した月までの源泉所得税は、特例の納期限までに納付する
自主的な取りやめ
要件を引き続き満たしている場合でも、自主的に特例を取りやめることができる。同様の届出書を提出する。
住民税の納期の特例
住民税の特別徴収にも同様の納期の特例がある。
→ 詳細は 住民税の特別徴収 を参照