租税条約に基づく免税
外国人従業員が日本で給与の支払を受ける場合、日本と相手国との間の租税条約に基づき、源泉所得税の免除を受けられることがある。年末調整においては、租税条約による免税の適用を受けている従業員の取扱いを正しく処理する必要がある。
出典:
租税条約とは
租税条約は、国際的な二重課税の排除と脱税の防止を目的として、二国間で締結される条約。日本は80以上の国・地域と租税条約を締結している。
租税条約は国内法(所得税法等)に優先して適用される(憲法第98条第2項)。
年末調整に関連する主な免税規定
短期滞在者免税(いわゆる「183日ルール」)
多くの租税条約に定められる給与所得の免税規定。以下の要件をすべて満たす場合、日本での給与に対する課税が免除される。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| ① 滞在期間 | 日本での滞在が課税年度(暦年)を通じて合計 183日以下 |
| ② 支払者 | 給与等が日本の居住者または日本にある恒久的施設から支払われていない |
| ③ 負担者 | 給与等が日本にある恒久的施設によって負担されていない |
3要件すべてを満たす場合のみ免税。日本法人から給与を受ける場合は②を満たさないため、短期滞在者免税は通常適用されない。
教授・教員免税
大学等の教育機関で教育・研究を行う外国人教授等について、一定期間(通常2年間)の給与等に対する課税を免除する規定。
学生・事業修習者免税
外国から日本に来た学生が受ける給付金や、事業修習者が受ける報酬等に対する免税規定。
| 対象 | 免税の範囲 |
|---|---|
| 学生 | 国外からの送金、奨学金等(日本での勤労対価は対象外の条約が多い) |
| 事業修習者 | 修習に伴い受ける報酬等(条約により対象範囲が異なる) |
免税の手続き
租税条約に関する届出書
租税条約による免税を受けるためには、給与の支払を受ける前日までに「租税条約に関する届出書」を給与支払者を通じて所轄税務署に提出する必要がある。
| 届出書 | 用途 |
|---|---|
| 様式7 | 給与所得(短期滞在者免税等) |
| 様式8 | 教授等の報酬 |
| 様式9 | 学生の報酬・交付金 |
届出書の提出フロー
- 外国人従業員が届出書を作成
- 給与支払者(会社)が届出書を確認し、税務署に提出
- 税務署が届出を受理
- 受理後、該当する給与等から源泉徴収を行わない
届出書は「届出」であり、税務署の「承認」を要するものではない。提出した時点で効力が生じる。ただし、要件を満たさない場合は事後的に課税される。
特典条項(LOB条項)が付された条約
一部の条約(日米租税条約等)では、条約の濫用防止のため特典条項(Limitation on Benefits)が設けられている。この場合、「特典条項に関する付表」を届出書に添付する必要がある。
年末調整における取扱い
免税対象の給与がある場合
| 処理 | 内容 |
|---|---|
| 年末調整の対象 | 免税対象の給与を除外して年末調整を行う |
| 源泉徴収票の記載 | 摘要欄に「条約免税」と記載し、免税対象額および適用条約の条項番号を記載 |
| 記載方法 | 免税対象額は赤書きする(電子提出の場合は所定の区分で記載) |
給与の全額が免税の場合
| 処理 | 内容 |
|---|---|
| 年末調整 | 課税対象の給与がないため、年末調整は不要 |
| 源泉徴収票 | 発行義務あり。摘要欄に「条約免税」と記載 |
→ 源泉徴収票 の摘要欄を参照
免税期間と課税期間が混在する場合
教授免税等で免税期間が年の途中で終了する場合:
- 免税期間の給与: 源泉徴収なし
- 課税期間の給与: 通常の源泉徴収
- 年末調整: 課税期間の給与のみを対象に実施
条約ごとの主な違い
租税条約の免税規定は条約ごとに内容が異なる。
| 相違点 | 例 |
|---|---|
| 183日の計算期間 | 暦年 / 継続する12か月 / 課税年度(条約により異なる) |
| 教授免税の期間 | 2年 / 3年 / 5年(条約により異なる) |
| 学生の勤労所得免税 | あり / なし(条約により異なる) |
| 特典条項の有無 | 日米、日英等は特典条項あり |
適用する条約の条文を個別に確認する必要がある。条約の有無や内容は 財務省 租税条約一覧 で確認できる。
TASHIKAにおける設計上の意味
- 条約免税の適用を受けている従業員をフラグとして管理する
- 免税対象額と課税対象額を区分して管理する
- 源泉徴収票の摘要欄に条約免税の情報を正しく出力する
- 条約免税は条約ごとに規定が異なるため、免税条項の手入力を許容する設計が現実的