所得の合計
税法上、「所得金額」には 合計所得金額・総所得金額等・総所得金額 の3つの概念がある。 名前が似ているが、それぞれ異なる場面で使い分けられる。
3つの違いは主に 2つの軸 で生じる:
- 繰越控除を適用するかどうか — 「純粋なその年の稼ぎ」か「過去の赤字を差し引いた後の金額」か
- 分離課税所得を含めるかどうか — 株式譲渡や土地売却などの分離課税分を合算するか
控除の適用可否判定・控除額の計算基礎・課税所得の算出で、それぞれ別の概念が使われるため、正確に区別することが不可欠。
年末調整では、控除の適用可否判定にほぼ「合計所得金額」のみを使う。 総所得金額等は確定申告での出番が多く、年末調整ではひとり親控除の子の所得判定など限定的。総所得金額は年税額計算の中間値であり、判定基準としては使われない。
3つの概念の比較表
| 項目 | 合計所得金額 | 総所得金額等 | 総所得金額 |
|---|---|---|---|
| ざっくり言うと | その年の純粋な稼ぎの総額 | 過去の赤字を差し引いた最終的な所得 | 総合課税グループだけの合計 |
| 長期譲渡所得・一時所得 | 全額(1/2なし) | 1/2適用 | 1/2適用 |
| 分離課税所得 | 含む | 含む | 含まない |
| 繰越控除 | 適用しない | 適用する | 適用する |
| 主な用途 | 控除の適用可否判定 | 控除額の計算基礎 | 課税所得の計算 |
各概念の詳細
1. 合計所得金額
定義: 各種所得の金額の合計額。繰越控除適用前。
使われる場面(控除判定):
| 判定 | 使用する金額 |
|---|---|
| 配偶者控除の適用判定(本人の所得区分A/B/C) | 合計所得金額 |
| 配偶者控除の適用判定(配偶者の所得48万円/58万円以下) | 合計所得金額 |
| 扶養控除の適用判定(扶養親族の所得48万円/58万円以下) | 合計所得金額 |
| 基礎控除の区分判定 | 合計所得金額 |
| 寡婦控除・ひとり親控除(500万円以下) | 合計所得金額 |
| 勤労学生控除(85万円以下) | 合計所得金額 |
| 住民税の均等割非課税限度額 | 合計所得金額 |
→ 各種控除の「適用可否の判定」に使われる最も重要な概念
2. 総所得金額等
定義: 合計所得金額に繰越控除を適用したもの。全ての所得を含む。
使われる場面:
- 医療費控除の足切り額(総所得金額等の5%)
- 寄附金控除の上限(総所得金額等の40%)
- 住民税の所得割非課税限度額
- ひとり親控除の子の所得判定
3. 総所得金額
定義: 総合課税の所得のみを合算した金額。損益通算・繰越控除適用後。
構成要素:
- 総合課税の所得(利子、配当、不動産、事業、給与、雑、短期譲渡)
- + 長期譲渡所得 × 1/2
- + 一時所得 × 1/2
- - 損益通算
- - 純損失・雑損失の繰越控除
使われる場面:
- 所得控除の計算基礎
- 課税総所得金額の算出(総所得金額 − 所得控除 = 課税総所得金額)
分離課税の所得がない人の場合、総所得金額 = 総所得金額等 となる。
非課税所得
所得税法やその他の法令の規定によって 非課税とされる所得 は、合計所得金額の計算に含まれない。 配偶者控除・扶養控除等の判定で配偶者や扶養親族の所得を見積もる際にも、非課税所得は除外する。
年末調整で問題になりやすい主な非課税所得:
| 非課税所得 | 根拠 | よくある場面 |
|---|---|---|
| 遺族年金(遺族基礎年金・遺族厚生年金) | 所得税法第9条第1項第3号 | 配偶者や親の所得判定時に除外 |
| 障害年金(障害基礎年金・障害厚生年金) | 同上 | 同上 |
| 失業等給付(雇用保険の基本手当等) | 雇用保険法第12条 | 中途退職者の所得判定時に除外 |
| 通勤手当(月15万円以下) | 所得税法第9条第1項第5号 | 給与収入の集計時に除外済み |
例: パート収入115万円 + 遺族年金80万円の母親 → パート収入115万円のみで判定(給与所得控除65万円を控除後、合計所得金額50万円 → 扶養親族に該当)
出典: 年末調整Q&A(令和7年分)問4
所得税と住民税での定義差異
合計所得金額の定義は所得税と住民税で異なる(退職所得の扱い)。この差異は配偶者控除・扶養控除の判定に影響する。