過不足税額の精算実務
年末調整で算出された過不足額の具体的な精算方法、経理処理、納付書への反映方法を記述する。過不足額の計算自体については → 年税額計算 を参照。
出典:
- 国税庁 年末調整のしかた(令和7年分) p40-44
精算の時期
年末調整は通常 12月の最後の給与支払時 に行う。ただし、以下のケースでは年の途中でも行う。
| ケース | 年末調整の時期 |
|---|---|
| 12月に最後の給与を支払うとき | 通常ケース |
| 年の中途で死亡退職 | 退職時 |
| 年の中途で海外転勤(非居住者化) | 出国時 |
| 12月給与を受けた後に退職する者 | 退職時 |
→ 年末調整の対象者については 年末調整の対象者 を参照
過納額(還付)の精算方法
年調年税額が既徴収税額の合計を下回る場合、差額を従業員に還付する。
精算の手順
- 12月給与での充当: 12月分の給与から徴収すべき源泉徴収税額に充当する。すなわち、12月分の通常の源泉徴収税額から過納額を差し引き、差引後の金額のみを徴収する。差し引ききれない場合は、その分を従業員に還付する
- 他の従業員の徴収税額からの充当: 同月に他の従業員から徴収すべき源泉徴収税額がある場合、過納額をその税額と相殺できる
- 翌月以降への繰越: 12月中に精算しきれない場合は、翌年1月以降の各月で同様に充当・還付を行う
- 税務署への還付請求: 上記で精算しきれない場合は、「源泉所得税及び復興特別所得税の年末調整過納額還付請求書」を所轄税務署に提出し、還付を受ける
経理処理
過納額の還付は 預り金(源泉所得税)の減少 として処理する。
【12月給与で還付する場合】
借方: 給与手当 xxx,xxx
貸方: 預り金(社会保険料) xx,xxx
預り金(源泉所得税) xx,xxx ← 通常の徴収税額 − 過納額(マイナスなら還付)
普通預金 xxx,xxx預り金(源泉所得税)がマイナスになる場合は、その分を従業員に追加で支払う(手取額が増える)。マイナス残高は翌月以降の預り金と相殺する。
不足額(追加徴収)の精算方法
年調年税額が既徴収税額の合計を上回る場合、差額を従業員から追加徴収する。
精算の手順
- 12月給与での徴収: 12月分の給与に対する通常の源泉徴収税額に不足額を加算して徴収する
- 翌月以降への繰越: 12月で徴収しきれない場合は、翌年1月以降の給与から順次徴収する
繰延徴収(70%ルール)
不足額を12月給与で一括徴収すると、手取額が大幅に減少する場合がある。このとき、所轄税務署の承認を得て翌年1月・2月に繰り延べることができる。
→ 繰延徴収の要件と手続きは 年税額計算 を参照
納付書(所得税徴収高計算書)への反映
源泉所得税の納付は「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書」(納付書)を用いて行う。年末調整の過不足額は、この納付書に以下のように反映される。
通常の記載方法(12月分納付書)
| 欄 | 記載内容 |
|---|---|
| 支給額 | 12月中に支給した給与・賞与の合計額 |
| 税額 | 12月分の通常の源泉徴収税額 |
| 年末調整による超過税額 | 年末調整による過納額の合計(マイナス符号) |
| 年末調整による不足税額 | 年末調整による不足額の合計(プラス符号) |
| 本税 | 税額 − 超過税額 + 不足税額 |
超過税額が大きい場合
年末調整の超過税額(還付額)が当月の源泉徴収税額を上回り、本税がマイナスになる場合:
- 本税欄は 0円 とする(マイナスの納付書は提出できない)
- 差額は翌月以降の納付書で調整する(翌月の税額から差し引く)
翌年1月以降に繰り越した場合
12月中に精算しきれなかった超過税額は、翌年1月分(納期限2月10日)以降の納付書の「年末調整による超過税額」欄に記載して調整する。
源泉徴収簿への記録
精算の過程は 源泉徴収簿 の過不足税額の精算欄に記録する。
| 記録内容 | 説明 |
|---|---|
| 差引超過額又は不足額 | 年調年税額 − 徴収済税額の合計 |
| 本年最後の給与から充当・徴収する金額 | 12月給与で精算する額 |
| 翌月以降に繰り越す金額 | 12月で精算しきれない額 |
精算の完了期限
法令上、過不足額の精算に明確な完了期限は定められていないが、実務上は 翌年2月 までに精算を完了させるのが通例である。2月を超えても精算が完了しない場合は、税務署に還付請求を行う。
→ 年末調整後に控除額の変動が判明した場合の取り扱いは 再年調 を参照